コーエンの強制法と連続体仮説の否定モデル 第2/11章



まずは前哨戦として「マーティンの公理」、
及びそこから導き出される結果「k≦2ω ならば 2k=2ωが成立する」
をやります。


マーティンの公理自体はコーエンの強制法とは直接関わりがあるわけではないのですが
根本の考え方は似ていて、
強制法において重要な役割を果たす「ジェネリックフィルター」の
使い方を学ぶために演習ケースとして扱われる事がありますので。

ここでもそれに習い
まずは導入パートとしてマーティンの公理から入ります。


・・・ただこれに関してはちょっと意地悪しますね^^;
噛み砕きません。


おもしろ数学コラムって事で
このサイトではなるべく平素でわかりやすい説明を心がけたいですが、
簡易バージョンは簡易バージョン。
あくまで例え話として出してるだけで
本物とは違います。

フィールズ賞を受賞する研究がどんな物か
垣間見せるために
いったん「わかりやすくする」スイッチ切って
しばらく本物の数学をやります。



以下の言明をMA(k)と書く:
<P,≦>が空でないc.c.cを持つ半順序であって、
DがPの高々k個の稠密部分集合の集合族であるとする。
この時PのフィルターGで∀D∈D(G∩D≠0)を満たす物が存在する。

用語説明:
・半順序とは対<P、≦>の対の事です。
・≦はP上の推移的で反射的な二項関係の事です。
・推移的とはa≦bかつb≦cならa≦cが成り立つ事です。
・反射的とは∀p∈P(p≦p)がなりたつ事です。
・二項関係とはa R bのように二つの要素を何らかの形で比較できる演算子の事です。
・Pは任意の集合です。
・「高々〜」とは「最高・最大個数でも〜」の意味です。
・c.c.c.とは可算鎖条件の事です。
・可算鎖条件とは半順序<P、≦>の中にどの反鎖も高々可算個しか存在しない事です。
・可算とはω0無限の事です。
・反鎖とは部分集合A(A⊂P)につき∀p,q∈A(p≠q → p⊥q)が成立する事です。
・p⊥qとは¬ヨr∈P(r≦p∧r≦q)の事です。
・稠密とは部分集合Dが∀p∈P ヨq≦p(q∈D)の事です。
・フィルターとはPの部分集合Gが「∀p,q∈G ヨr∈G(r≦p∧r≦q)」かつ「∀p∈G ∀q∈P(p≦q → q∈G)」が成立する事です。


以上の時、
マーティンの公理とは∀k<2ω(MA(k))が成立すると言う公理の事である。


マーティンの公理は
ZFC公理外にあるオプショナルな公理ですから
成立する必然性は特にはありません。
(反面、ZFC公理については人間的な感覚に基づいて「自明」すぎる為
 ほぼ必ず成立すると考えられます)

しかし、仮にマーティンの公理が成立すれば
 k≦2ω ならば 2k=2ωが成立します。
(2ω以下の無限kは全てωと同じように振る舞うと言っている)

なぜならマーティンの公理自体が
「∀k<2ω(MA(k))」なる
言明の事なので、
文字通り2ωが壁になって
それ以下のkについては全て自動的にMA(k)成立、
すなわち同じタイプの性質を持っていると言っているわけですから。


(完了)


こんな感じでしょうかね。
マーティンの公理とその最初の応用例です。




はい、ここまで。
次行きましょうか。


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