コーエンの強制法と連続体仮説の否定モデル 第10/11章
小数の存在証明、最後のパート。
3.小数についての+−演算の無矛盾性を(整数世界の中から)証明する
を示します。
まず、我々は、
小数の存在・数値・計算方法を知っていますから
小数同士をいくら+と−しても
3.1 > 5.5
や
192.3 > 263.9
のような変な答えが出てこないのは知っています。
実際に小数同士の計算を行って、答えを出して、その答えに矛盾が出ないのを知っているから
言えることです。
いっぽう整数世界の住人には小数の実体が見えませんから
3.1 − 2.6 = ?
のような計算式が
α − β = ?
のように見えてます。
小数の計算が出来ない彼らにとっては
答えに矛盾が発生する以前に、「答え」に辿り着くことも出来ません。
これまた難題が降ってきましたが・・・
あります。
整数世界の中に居ながらにして、
小数世界の+−演算が無矛盾である事を証明する論法が。
それが以下です。
整数世界住人の立場で考えます。
もし仮に、<整数より上の世界>で小数同士の+−演算を行い、
<整数より上の世界>で矛盾が発生したとします。
この場合の矛盾とは
α > β
かつ
α < β
が同時に成立する事です。
ところが、整数世界の住人にとっては小数の世界の演算法則はわかっていないので
彼らにとっては
α > β
α < β
が同時に成立していても
そこに「矛盾が起きている」事がわかりません。
小数の世界を知らない整数住人にとっては
「整数の世界ではα>βかつβ>αが成立してたら矛盾だけど、
小数世界では、α>βかつβ>αみたいな2数字が存在するの? していいの?」
と思ってます。
それぐらい彼らにとっては小数の世界は未知の領域です。
小数を知らない彼らにとっては、「小数の世界の中ではどんな事柄が矛盾になるか」さえもわからないんですね。^^;
ところが上記の式を変形してみましょう。
α > β
0 > β−α (式A)
β > α
0 > α−β (式B)
式Aと式Bの両辺を足すと
(a>b、c>dの時はa+b>c+dが成立する)
0 > 0 (式C)
が発生します。
そして0>0が矛盾と言うのは整数世界の住人でもわかります。
なぜなら0は整数からです。
あっ、解けちゃった。
こうすればよかったんです。
このように、小数同士の計算はわからない彼らでも
小数同士をこねくりまわして
答えが整数になるように持って行くと
その瞬間だけは彼らにも姿が見えるようになります。
そうして
もし小数同士の演算で矛盾が発生する → 整数同士の演算でも矛盾が発生する (式C)
を示すことで、
小数同士の演算に矛盾がない事を
整数世界の論理から導くことができます。
なぜなら:
まず、整数同士の演算には矛盾がないのは
整数住人の彼らにもわかっています。
そして、もし「小数同士の演算で矛盾が発生する」ようだと
→「整数同士の演算でも矛盾が発生する」が発生。
ところが後者の事態は発生していない。
なので前者も発生していない、
そこで「小数同士の演算で矛盾が発生しない」事が導かれます。
・・・・・
・・・
・・
・
じゃん!
これにて証明終了。
小数存在の3条件
1.整数ではない数字の存在を(整数世界の中から証明する。
(この類の数字を仮にタイプXと呼ぶ)
2.タイプXについての+−演算を(整数世界の中から)定義する
3.タイプXについての+−演算の無矛盾性を(整数世界の中から)証明する
を全て示したので
晴れて元のお題である
「整数の世界に住んでいる住人の視点から、
整数と+−演算だけを使い、
小数の世界の存在を証明せよ」
を完了しました。
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