バナッハ・タルスキーのパラドックス 第4章



本番スタート。
 正方形 = 正方形+正方形
を導きます。


その為にはまず「有理数加算による同値フィルター」と言う物を導入します。

これについては実は以前のコラムで書いたことがあります。
測度論と、面積が測定できない不思議な図形の話 - 4の、
「正方形を有理数加算による同値関係フィルターで分解して[0,1]=ΣQn
です。

ここでも全く同じ物を使うので
コピペですみませんが測度論と、面積が測定できない不思議な図形の話 - 4
ページを読んで復習しておいてください。


このフィルターにかかると

単位正方形=Q1+Q2+Q3・・・=ΣQn
で表現できます。
(以下、正方形=単位正方形の事として用語を省略します)


そして仮にQ1+Q2+Q3・・・を二つに割って、

 図形A=Q1+Q3+Q5・・・
 図形B=Q2+Q4+Q6・・・
としてみましょう。

正方形=Q1+Q2+Q3+Q4+Q5+Q6・・・
ですから、
 正方形=図形A+図形B
に分割されてる事になります。

ここからが議論の本質です。
注意して流れを追ってください。


まず無限ホテル2問題の「奇数番号空き」パターンを思い出します。
あの時は「2n号室の住人にn号室に移って貰う」操作によって

空いた1号室には2号室の住人が入るので1号室が埋まり、
空いた2号室には4号室の住人が入るので2号室が埋まり、
空いた3号室には6号室の住人が入るので3号室が埋まり、
空いた4号室には8号室の住人が入るので4号室が埋まり、
・・・
全ての部屋が満室になりました。


これと同じ事を図形Bに適用すると  図形B=Q2+Q4+Q6・・・
「Q2nの住人にQnにスライド移動して貰う」操作によって
Q1にはQ2がやってきて、
Q2にはQ4がやってきて、
Q3にはQ6がやってきて、
Q4にはQ8がやってきて、
・・・・
で、
 図形B=Q2+Q4+Q6・・・
 スライド結合(図形B)=スライド2→1(Q2)+スライド4→2(Q4)+スライド6→3(Q6)・・・
            = Q1+Q2+Q3・・・・
            = 正方形
が出てくるんです。


さらにスライド結合(図形B)と言うのは、
図形Bの各々の要素(Qn)をスライド移動させ、寄せ集めただけで、
点そのものは増やしていません。

全部自分の持つパーツから寄せ集めただけなので
点の増加は全くないんです。
無限ホテル2と論理は同じです。

結局図形Bを「各パーツをスライドし、寄せ集める」。
ただそれだけの操作で
 図形B → 正方形
に変形させる事ができました。


同様の議論で
 図形A → 正方形
変形も可能。


ところが
 正方形=図形A+図形B
だったので、
結局これは
 正方形 → 正方形+正方形
に変形される事になり、
これこそが

「正方形を分割して、スライド移動させた後に結合したら、正方形が二つに増殖してた」

です。



さらに驚くべき事なのですが
実はここ「騙し」のトリックはありません。
怪しい論法でいつのまにか読者を
煙に巻いたとかそういうインチキ、似非パラドックスとは訳が違うのです。

だってこの「正方形を分割して、スライド移動させた後に結合したら、正方形が二つに増殖してた」
自体はただの「図形の分割」、「図形の移動」、「図形の結合」
などの純粋な図形操作であり
不正の入る余地はありませんから。


本当に騙しはありません。
しつこいですが
 正方形を分割して → パーツ単位でスライド移動させ → 結合したら → 正方形が二つに増えてた
は数学的には疑いようのない真実。



いったい何がどうなってるんでしょうか。
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