数とは何か。数学V宇宙の脊髄を自然数が走る。 第2章



『集合』と言っても数学では普通二種類の意味があります。

いわゆる一般的な、広い意味では
「『何か(元と呼ばれる)』を集めて押し込めた箱」と捉えられます。
『何か』は何でもいいです。
{1,2,3}のような数字、{A,B,C,D}のような記号や、もしやりたければ{犬,猫,キリン}などでも。
本当に何でも。


集合にはその他にも具体的にメンバーを与えないでも
条件式、例えば
 集合A = {x:x2=4}
のような形でも書けます。
これは「集合Aは、x2=4を満たすようなxで構成される」と読むことができ
具体的にすると
 A= {x:x2=4}={2,-2}
と同じ事になります。

集合の中には何を入れてもいいです。
ただの箱です。それ以上でもそれ以外でもありません。


まあこれが数学での元々の『集合』の意味でした。
「箱」、それだけだったのですが
ある日問題が発生しました。


ラッセルと言う人が意地悪に 「集合Aは、集合Aに含まれないメンバーで構成される」とした
集合を提唱したのです。
これは集合の第二の形、条件式による集合の定義ですね。
有名なラッセルのパラドックス。


この条件式は解けません。
なぜなら、「もし元xが集合Aに含まれると仮定するなら → 定義により元xは集合Aに含まれない → 矛盾」
そして「もし元xが集合Aに含まれないと仮定するなら → 定義により元xは集合Aに含まれる → 矛盾」
でどっちにしても矛盾が発生するので集合Aは存在できないのです。

このように集合の第二定義方法、条件式による集合の定義については
そもそも「条件式が本当に成立できるのか」しっかり確かめておかないと
矛盾が発生する恐れがあるので実はすごく危うい。


問題はここから。

ラッセル集合では簡単な論証を展開する事で矛盾が存在する、よってラッセル集合は存在できないと
証明されました。

それではさっきの
集合A = {x:x2=4}
ではどうでしょうか。 答えはもちろん
 A= {x:x2=4}={2,-2}
でこちらは逆に具体例を出して集合が存在できる事を証明しましたが・・・

それでは聞きましょう。
「数字の2、および数字の-2の中に矛盾が含まれない保障はあるの?
 すなわち『数字』と呼ぶ概念およびシステムに矛盾がない保証は誰がしてくれるの?」
と。


これが実に難しいんですね。
我々は何気なく「(ラッセルシステムとは違い)数字システムには矛盾はない」を
自明の理として受け入れてますが
その証明自体は見たことがないのです。


ここに来て数学界は「(矛盾の出ない)きちんとしたシステム」とは何なのかを
考察し、構築する必要が生じたのです。
これが本当の意味での集合論、または公理理論、数学に対しての考察(メタ数学)と言う
ジャンルが誕生した瞬間でした。


次のページでは現代数学の考える「矛盾のない(と思われる)きちんとしたシステム」を
説明します。


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