1+2+3+・・・・ = -1/12!?
ゼータ関数の解析接続による演算簡易解説


「1+2+3+4・・・=-1/12!?(2006/11/07)」

ネットで面白いコラムを見つけました。
パート3「驚異の数学」 (第5回)有限の先にはない無限


数学の話ですがふむふむ、これを読んでいくと面白い証明が。
リーマンのゼータ関数から始まり
ゼータ関数の性質からベルノーイの公式に。
ゼータ(-1)の値をこの二つを合わせて導くと

1 + 2 + 3 + 4 + 5 + 6 + ・・・・ = -1/12

ってなんじゃそりゃぁぁぁぁぁー!


ちょ、ちょっと待って!?
こんな計算誰がどう見ても明らかに答えは「無限」でしょ。
なんでマイナス?なんで分数が出てくるの?
何やってるんですかこの人たち!?



恐らく全員がそう思ったと思います。
はい、そしてあなたは正しいです。
答えは無限であって計算できません。(^^;
じゃあなんでこんなトンデモ?な計算結果を数学者達は出してしまっているか解説をば。


これは数学の「解析接続」と言う手法を使って導きだされた結果なのです。
解析接続の数学的定義を挙げると

開集合U(⊂C)内で定義される関数fは解析的(analytic)とする。
開集合V(⊂C)がUを含み、かつV上で定義される関数Fが解析的であり、かつF(z)=f(z){z:z∈U}であるなら
Fはfの解析接続と呼ぶ


こんな感じ。

・・・異次元言語ですね。( ̄□ ̄;(各単語の意味さえ知ってれば特に難しい事はないんですが)

しかしコラムで述べられている問題そのものは非常に面白く、
とても興味深い命題なのでいったい彼らが何をしているか、
何が起きているのかエッセンスだけでも伝えようと小難しい専門用語とかは抜きに
できるだけニュアンスに訴えれるようにやってみます。
これすごいんですよ。


------------------------------------------------------------------------------------------------------------

まずはちょっと復習してみましょう。
             (式1)
これがζ(ゼータ)関数と呼ばれる物の定義です。

Σ記号はある範囲の数を足す記号で具体的には
 ζ(1)= (1÷1) + (1÷2) + (1÷3) + (1÷4) + ・・・
 ζ(2)= (1÷1) + (1÷4) + (1÷9) + (1÷16) + ・・・
 ζ(3)= (1÷1) + (1÷8) + (1÷27) + (1÷64) + ・・・
こんな風に無限に展開されます。
数を無限に足すわけですが最後の方はどんどん小さくなり最終的には一つの値に収束するので
問題ありません。電卓とかでやってみても普通に計算可能な内容です。

普通はsは>1以上の値を考えるのですが、ここに意地悪にs=-1を代入するとどうなるかやってみましょう。
-1乗すると分母がひっくりかえるので
ζ(-1)= (1×1) + (1×2) + (1×3) + (1×4) + ・・・
   = 1 + 2 + 3 + 4 + ・・・・
となり解が無限に発散してしまい計算になりません。

もちろんs=-2の場合も
ζ(-2)= 1 + 4 + 9 + 16 + ・・・・
のようになり無限になり計算できません。

実際はs=1、すなわちζ(1)=(1/1)+(1/2)+(1/3)+(1/4)・・・の状態から発散し始めてs=1以下の全てのsにおいて無限になり計算できません。
このように答えがすぐ無限になってしまい計算できないsの値がたくさんあるゼータ関数はなかなかに窮屈なようです。


「計算できない」ではにっちもさっちもいきませんからそこでゼータ関数の性質は残したまま、
解が無限になってしまうような厄介な所だけをなんとかねじ曲げ
さらに複素数空間全体で定義できるもっとパワフルな新しいゼータ関数とも言うべき関数を模索してみます。

なんて我が儘な要求だ!って感じですが・・・実はやり方があるんです。
それが冒頭の解析接続です。


例えばこんな事です:

途中で切れた青い線がサンプルとして与えられた時、
なんとなくですがこの青い線の消えた向こう側は赤い点線のような形になっているんだと自然と想像できます。
(ちなみにこのグラフはy=1/x)
限られた情報を元に残りの全体像を想像し補完しているんですね。


いかがでしたでしょうか。多分これなら「ああ、なるほど」って感じがすると思います。
この拡張に似たような事を窮屈な(旧)ゼータ関数に解析接続でつなげ、もっと自由な(新)ゼータ関数とも言うべき物を作ってみます。
答えが無限になってしまうせいで「計算できない」にしていた事を意味を拡張する事によって「計算できる」ようにしてしまうのです。



具体的には(新)ゼータ関数は以下の形で表せます。

                  (式2)

・・・あんぐりしてしまうほど長いですが
実際は長いだけでそれぞれの項目その物はただの四則演算で計算できます。
根気よく展開を続けてゆけばいいだけで中学生の初等代数レベルと難易度そのものは変わりありません。


証明は避けますが事実としてこの新ゼータ関数は非常に重要な性質を持っていて:
これらを考慮すると新ζは旧ζの実に正当な拡張とも言えるべき存在です。
すなわち旧ζをカバーしつつ(旧でも計算可能な場所では値が一致する)、自然な形(解析的)で複素数全体に存在できる素直な複素数関数です。
旧ζではできなかったz=-1の位置にも新ζなら自然に適応できるのがミソで
ここにz=-1を代入する事で最初のコラムで得た結果

1 + 2 + 3 + 4 + 5 + 6 + ・・・・ = -1/12

が出てくるのです。
これ自体は(式2)にs=-1を代入し後は根気よく計算するだけで何も難しくはありません。
繰り返しますが長いだけで中身はただの四則演算ですから紙と鉛筆があれば誰でも計算できます。
よっておかしな所はありません。

これにより命題は証明されました。
                   QED







ってええええええええええ(´д`;

多分途中まではよくても最後のところでやっぱり何がなんだかわからなくなったと思います。(^^;
そう。本当は、旧ζから新ζに変わった瞬間に確かに何かが起きてて、そこで何かが変になってなぜか-1/12が出てきてしまったんです。

長いので次回へ続きます。
次はなんでこんな計算が成り立っちゃうかのカラクリ、及びΣi=-1/12に対する数学的解釈などを解説できたらなと思います。

これはトンデモ理論ではありません。厳密な理論の上に成り立ち、世界の偉大な天才達を魅了した厳然たる数学的成果の一つなのです。



「1+2+3+4・・・=-1/12!? パート2(完)(2006/11/09)」

さて、1+2+3+4・・・=-1/12(?)を検証する前にまずゼータ関数について少し歴史をノートしてみましょう。
ゼータの重要性を知っておくと人はなぜこんな研究をしてなぜこんな結論を出したのか理解が深まると思います。


まずはπと素数について。こいつらは数学の二大メインテーマです。

数学のどのジャンルを研究しても、
どの分野にいても、どこで何をやっても
ありとあらゆる場所になぜかπと素数は顔を出してくる目立ちたがりな奴らで
こいつらは数の本質に限りなく関わっている存在だと考えられています。

そして一方ゼータ関数、
             (式1)
リーマンによって考案されたこれには
などの性質が見つかっており
この式の中からπと素数を生み出せる能力を有するこいつの秘密を調べれば
πと素数の事がもっとわかるんではないかと考えられこれがゼータ関数が数学で重大な理由です。


しかしゼータ関数には欠点があります。
それは(旧)ゼータ関数はs>1の時でないと答えが無限になり計算できないのです。
これだけ重要な関数なのにもったいない!

そこで数学者達は解析接続(analytic continuation)と言う手法を考えました。
旧ゼータ関数がきちんと定義されている場所を元に、
滑らかにゼータ曲線を延長し、複素数空間全体にまで広げる手法を。
複素数空間では実数空間よりも微分条件が非常に強くなるのでほんのわずかな空間の範囲の値がわかっていればその関数の複素数空間全体での動きも算出できるのです。


その結果出てきたのが
                  (式2)
この新ゼータ関数。

旧ゼータの値を全て含みながら、さらに旧ゼータでは無限になり計算できなかったs=-1などの部分も
計算できる機能のついたパワーアップ版です。
そして新ζ(-1)を代入して出てきた結果が
1 + 2 + 3 +・・・・ = 旧ζ(1) →拡張→ 新ζ(1)= -1/12

すなわち 1 + 2 + 3 +・・・・ = -1/12(?)
なのです。

しかし見れば見るほど変な式。
左辺は正の整数の集まりですので
どこをどう計算したとしても右辺のマイナスや分数が出てくるわけがありません。


カラクリがどこにあるかと言えば、それは旧ζと新ζの間です。
そもそも
 旧ζ(-1)= 1 + 2 + 3 +・・・・ = ?
は当たり前ですが答えが無限になり計算できません。
議論も何もありません。できない物はできないです。答えが不定なのでどうやっても扱えません。終わり。^^;

図にするとこうです。

これなら一目瞭然。わかりやすいですね。


注:
なお、本来のゼータ関数のグラフは

こんな感じなのですが
一般にはグラフは左から右へとあがってゆくノの字型の方が見慣れていると思いますので
このページでは変則的にX軸の左にいくほどプラス、右に行くほどマイナスとして描きます。
見た目が左右反転しているだけで他に問題はないので気にしないでください。


・・・・・・しかし、もし?仮に?無理を承知で?グラフに+1から先があったなら・・・

あるんですそれが。
複素数を使えば。

どうするかと言うと
図6:
この二次元グラフの底に虚数軸をとりつけ、実数xを複素数zに拡張します。

図6の時点で実数上の(-∞、+1)までの間の曲線は書けています。
曲線があるならその微分(角度)もわかっています。

コーシー・リーマンの方程式により
 ∂u/∂x=∂v/∂y
が成り立つので同時に曲線の虚数方向への微分(∂v/∂y)も算出される事になり、角度がわかり、
この曲線が今後どう虚数方向へ曲がってゆくかがわかるのです。
しかも一カ所ではなくずっとずっと先まで。


そうして図6のグラフを複素数に拡張して書き直したのがこれ!

真横から。



少し上に回って


左上から。
(なおグラフはあまり正確ではありません。本当の式の計算は非常に面倒なので似たような形をした関数を勝手に作っただけです。(爆)
大切なのは何が起きているかをフィーリングで理解する事なので偽物でもそこらは気にしないでいいです。)



こうすれば実数軸にいるだけじゃ通れなかった(x=+1,y=∞)の壁を
虚数軸から回り込んで回避して

無事にx=-1まで辿り着き、ゼータ関数のx=-1での数値を計算できるんです。


そう、この拡張グラフを描いているのが式
であり、
グラフでのx=-1での値が
 新ζ(-1)=-1/12
なのです。


やってる事自体はさっきの



は同じと思っていいです。
確定しているポイントを足場に、残りを自然な形で拡張しただけと。
これが「解析接続」です。



だから
 1 + 2 + 3 + 4 + 5 + 6 + ・・・・ = -1/12
と書くのは言いたいことはわかりますがかなり誤解のある書き方です。(実数公理体系が成り立ちません…)
あえて記すなら
旧ζ(-1)=1 + 2 + 3 +・・・=計算不能。
新ζ(-1)=((1-2(1-(-1))(-1))・Σ(△i/2(i+1)) =-1/12


1 + 2 + 3 +・・・・ =(不可能だがもし答えがあるとするなら)-1/12

1 + 2 + 3 +・・・・ =-1/12 (解析接続による評価)

(1 + 2 + 3 +・・・・ )のキャラクターは-1/12

などの注釈をつけてなんとか形になるような計算式です。

繰り返しますが1 + 2 + 3 + 4 + 5 + 6 + ・・・・ = -1/12は間違いです
読者の気を引くためのセンセーショナルな見出しとしてつけられているだけで
本当にこんな式が成り立っているわけではないと言うのはご理解ください。
正しくは
・旧ζ(-1)=1 + 2 + 3 +・・・=計算不能
・新ζ(-1)=-1/12
であり、新・旧ゼータ関数のx=-1での値を途中ですり替えて無理に比較した似非計算式と言うだけです。



「つーかさー、そんな無理してまで計算してそれって意味あるの?」って話ですが(^^;;
根拠もそれなりにあります。

まず関数は一般に実数空間よりも複素数空間で最初から複素数zをベースに定義される方が礼儀正しく振る舞うようになります。
実数方向にも虚数方向にも矛盾なく微分される要請により行動が実数空間より限定されるからです。
実数線で関数の値が無限になっても虚数方向に逃げて迂回すれば有限のままzを動かせますし。
とにかく特典満載。いい所だらけ。
よって実数でしか定義できない旧ζよりも複素数空間全体(s=1除く)で滑らかに定義される新ζの方が関数としては本来の生息地みたいな物です。

また解析接続の唯一性により新ζは旧ζの複素数空間への唯一の正統な拡張系であり
旧ζを正しく拡張できる関数があるとすればそれは新ζ以外にはありえません。
一本道なら前に進むのみ。少なくとも新ζは旧ζの全値を含むので情報のロスはありません。
そして新ζ(s)に-1を代入し無限をうまく回避した後に無茶を承知で新旧ζ(-1)の値を比較してみるとそこには
1 + 2 + 3 +・・・・ =-1/12 (答えがあるとするなら)

こんな神秘的な結果が出ていました。



ζ(-1)の話はこれで終わりです。
数学者達が何を根拠にこんなトンデモに見えるような値を導き出したのか
議論のエッセンスを取り出してできるだけわかりやすく説明してみました。
まだ本当は細かく説明できてない所はありますが(普通複素数などと言う概念には慣れ親しんでないであろう一般の方々のため便宜上、
新ζの存在を仮定として導入しましたが本当は新ζが正しくて旧ζが存在してはいけない違法な関数です。なので上記の論理は本当は逆方向に比較されます。)
あとの詳細な理論を知りたい方は解析接続の専門書などを読んでみてください。
想像を絶するような内容ですが1+2+3+・・・から-1/12と言う数字は厳密な理論展開の上に必然的に現れてくるのです。


それにしても、多少強引な等号だとしても

 1 + 2 + 3 +・・・・ = -1/12

なんて美しい等式だと思いませんか?^^

                      □

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